1.「財産をすべて任せる」等と書くことは
自筆証書遺言を書くに当たり、例えば、「東京都世田谷区世田谷町何丁目何番何号の土地、建物を妻である東京花子に「財産をあずける」or「財産を自由に使え」or「財産を渡す」or「財産をすべて任せる」」と書くのではなく、単純に、「遺贈する」と書くことを遺言書の書き方としておすすめ致します。
「遺贈する」の用語の意味は、遺産を相続の開始の時の状態で、その財産を引き渡し又は移転することをいいます(民998)ので、遺言書で明確に財産を特定の相続人に財産を引き渡しことを意味します。
遺言書の文言の解釈は、最高裁判所昭和58年3月18日判決によりますと、次のように解釈すべきといわれています。
「遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく、遺言者の真意を探求すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたっても、単に遺言書のなかから当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の心理を探求し当該条項の趣旨を確定すべきものであると解するのが相当である。」
「あずける」「使う」「渡す」「任せる」などの文言が、遺贈と同じ意味と解釈することができるかどうかは、全体の文脈、作成の意図で、解釈されますので、遺贈と捉えない場合もあるかもしれません。そこで、遺言書には、「遺贈する。」と書くことで、誤解して、読まれることは発生しません。
2.「相続させる」と書くことは
自筆証書遺言を書くに当たり、財産を「相続させる」と書きますと、「遺贈する」と解するときと、「遺産分割方法の指定」と解するときがあります。
遺産分割方法の指定と理解されますと、遺産は未分割状態ということになるため相続人間で、遺産分割協議をおこなう必要があります。もし、分割協議で意見の相違がでて、それが整わない場合には家庭裁判所へ調停か審判の申出が必要となります。
そこで、遺産を相続の開始の時の状態で、その財産を引き渡し又は移転することを意味する「遺贈する」を遺言書の書き方としてはおすすめ致します。