会社を経営するうえで、資本を構成するオーナー株式だけでなく、会社オーナーが貸付している貸付金、会社の工場や事務所などとしてオーナー個人所有の不動産を会社に貸している場合の賃貸不動産やその敷金、保証金などをオーナー経営者として、会社に対して保有していています。オーナー経営者の株式の承継だけでなく、会社の事業運営に資するための賃貸不動産、敷金等を後継者に遺言で遺贈することが必要ですが、遺言書の書き方としては、漏れがちです。
特に、会社の業績が悪くなりますと、オーナー経営者は会社の運転資金を銀行から借りるよりも自己資金を会社へ貸付することの方が手続きと時間がかからないため、オーナー経営者からの貸付金に依存し累積することになります。その貸付金は、大概にして、返済不能となります。貸付金が多額になりますと、この貸付金は相続財産を構成し相続税の課税対象となり、資金回収が困難なため相続税だけの負担が相続人に重くのしかかります。そこで、生前に、回収不能な貸付金は、債務免除をして貸付金を減らしておく必要があります。
会社の株式を特定の相続人である後継者に承継させるとなると、他の相続人の遺留分を侵すことになりかねません。そのためには、遺留分対策をとる必要があります。
なお、事業承継税制を利用する場合には、その遺留分対策として、民法特例制度が用意されています。その制度としては、除外合意制度、固定合意制度があり、会社承継だけのために用意された制度で利用すべきです。
また、相続税の軽減措置として、同居親族等が事業用不動産を相続しますと400㎡までの小規模宅地としての事業用宅地の80%減の軽減措置等が受けられます。それらの軽減を受けるためには誰にどれだけ遺贈するのかが大切になります。また、株式の承継について、事業承継税制を利用すると、特例措置の場合は100%の軽減措置が受けられます。
遺言書は、相続税の税額軽減、遺留分、配偶者の生活維持、会社経営等の要素を考慮し、誰に財産を遺贈するのかを総合的に判断しながら遺言書の書き方に細心の注意を払い会社承継に詳しい税理士等に相談しながら書かなければなりません。そのためには、痴呆にならない元気な年齢のときに、かつ、その遺留分対策としては時間もかかりますので、時間的な余裕を持って、遺言書を作成しなければなりません。