相続税の実地調査(自宅調査)が行われるまでには、税務署のなかで、その相続税調査ないし相続税税務調査の対象として選定するための作業があります。
その流れは、次のようなものといわれています。
① 相続税の申告書が提出されますと、単純な計算誤りがないか等の相続税調査ないし相続税税務調査前の簡易審査が行われます。
この簡易審査において、誤りが発見された場合には、税理士か納税者に連絡し、是正措置が取られます。この是正措置は、原則として、行政指導とされるため、加算税の課税処分はありません。そのため、相続税申告書を申告期限間近に提出するよりも、申告期限よりもかなり前に提出しておけば、申告書の検算を税務署がしてくれます。そのことを考慮すると、相続税申告書を早期提出をすることには、メリットがあるものと考えます。
➁ 申告審理対象事案の抽出
相続税の申告案内及びお尋ねが相続人に送付されます。納税者からお尋ねの回答を得ますが、その回答内容が妥当なものであるのかを検討します。その回答内容が期限内申告を想定していたものと申告が当初の想定したものに妥当しているのかも検討致します。お尋ねに対する回答のないものや、申告のないもので、相続税の課税が見込まれるなどの選別がおこなわれます。
③ 上記➁で抽出されたもののなかから、実地調査(自宅調査)対象事案の粗選定が行われます。
④ ③で粗選定されたものの絞り込みをします。
⑤ 実地調査(自宅調査)対象事案の選定理由
粗選定された対象事案を絞り込む基準は、署内では、準備されていますが、外部には公表されていません。しかし、その選定理由といわれるものとして、つぎのようなものであるといわれています。
1.高額な申告がなされたもの
2.被相続人の職業、所得状況からみて不表現資産(金融資産)の申告が少ない。
ここでいう職業とは、高額所得が予想される医師、弁護士等の専門士業や芸能人、高額資産家、大会社の役員などがあたるものと考えられています。
3.不表現資産(金融資産)の申告が高額と予想されるもの
5.外部収集資料からみて、申告額が明らかに過少なもの
6.著名人又は社会的に注目を集めた者
7.国外取引や信ぴょう性の高いタレコミ情報等からみて調査が必要と認められる事案
8.家族名義の資産が多額で、その資産形成状況に疑義があるもの