統括官等から相続税の相続税調査(相続税税務調査)を要すると選定された対象事案については、調査担当者が、さらに、その事案の分析、検討を加えて、調査項目の的確な抽出を行います。すなわち、提出された相続税申告書に申告漏れ財産があることが予想される場合には、申告漏れに至った原因、理由を探るべく、更に、事前調査をおこないます。
この相続税の相続税調査(相続税税務調査)の事前調査の段階で、実地調査対象事案がわざわざ臨宅調査をするまでもなく、調査省略事案になることもあります。また、相続税の相続税調査(相続税税務調査)の実地調査に至らない、事後処理対象案件(実地調査以外の調査事案)として、納税者から修正申告を求めて処理を終わらせるものもあります。
すなわち、事前調査で得られた資料等から相続税申告書に遺産として申告していない理由が判明できた場合には調査省略や電話等で修正申告を求めればいいと税務署長が判断することがあるという意味ですが、納税者本人にはそのことはわかり得ません。
1.申告審理・準備調査時に追加的に行われる署内資料の収集・検討を行う。
(1) 資産税関係簿書からの検討
① 過去の相続での相続人の取得財産からの検討
被相続人ないし被相続人の配偶者が過去の相続で取得した財産を把握し、被相続人の相続開始時点の財産としてどのように反映しているのかを把握するものであります。
被相続人の過去の不動産や有価証券の譲渡等により、その譲渡収入金額の使途をおおよそ予測します。また、譲渡収入金額が不動産の購入等のために使用されたものなのか、貯蓄されたものなのか等のその使い道を解明し、その使途が不明の場合には、要調査項目として取り上げられます。
③ 借地権の使用貸借、土地等の無償使用の届出書の確認
相続時点の土地等に付着する権利関係を確認し、申告評価額が正しく計算されているのかを把握しておきます。
(2) 所得税関係簿書からの検討
① 過去3年程度の所得税申告書の内容からみて、それに見合った相続財産の申告があるのかを検討すします。生活費等から貯蓄額を推定します。
➁ 利子、配当、生命保険、損害保険の資料から、該当の金融資産や生命保険、損害保険が相続財産として申告されているのかを検討します。
③ 過去の所得税調査事績等の内容の検討
④ 各種法定調書(不動産、利子、配当等)との照合
被相続人の過去の確定申告の情報の内容から財産形成を把握して、相続税申告書の内容が検討されることを知るとともに、そこには家族も含まれるものと理解すべきでしょう。なぜなら、被相続人及び相続人の固有財産の形成は、過去の所得申告の情報でおおよそ把握できるからです。所得申告のない相続人である配偶者やその他の親族が、金融資産を増やしている場合には、その理由について相続税申告前に検討することになります。
(3) 法人関係簿書からの検討
① 法人税申告書(勘定科目内訳書)から被相続人等に係る貸借関係の検討
法人が被相続人からの借入金や預り金等について、貸付金等として相続税申告書に反映されているのかを検討します。
➁ 法人の取引金融機関の把握
法人が金融機関に口座を持っている場合には、被相続人や相続人も口座を開設している可能性が高いので、個人口座の申告漏れがないかどうかを検討します。
③ 株式(出資金)の異動状況の把握
株式等をめぐる相続税、贈与税に関連する重要な情報で、特に非同族会社株式の評価が適切に申告されているかを検討いたします。
④ 過去の調査事績の検討
なお、法人の業績が悪く、会社代表者である被相続人が、会社に多額の貸付金を残して相続を迎えることがあります。被相続人の会社への貸付金は回収が困難でありますが、相続財産として通常の評価がされますと多額の相続税が課税されます。会社への多額の貸付金がある場合には、早めに、債権放棄等の対策をとっておくことが大切です。
また、名義株がある場合には、早めに、実質上の所有者の名義に変更するために、名義人から名義株である旨の確認書をもらっておくことが必要になります。
(4) 追加的に行う署外資料の収集・検討
① 事前の照会回答内容の整理・検討を行い、不足があれば「補完照会」を実施します。
➁ 照会回答の遅延があれば、電話督促等をして早期にその資料の収集を図ります。
要調査項目を資料等で、実地調査をする前に効率的に、正確に、確認できるかどうかが税務署にとっても納税者にとっても重要です。